面目ないとはどんな気持ち?その意味と使い方

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「面目ない(めんぼくない/めんもくない)」は、古くから日本語に存在する表現で、「恥ずかしくて相手に顔向けできない気持ち」を表す言葉です。

謝罪の場面で使われることもありますが、正しくは「自分の体面や面子が保てないほど恥ずかしい」というニュアンスが中心です。

この記事では、辞書的な解説から日常・ビジネスでの使い方、類語・英語表現まで、面目ない意味を総合的に解説します。


面目ないの意味とは?

面目ないの辞書的解説

主要な国語辞典では「面目ない」を次のように定義しています。

  • 広辞苑: 面目が立たない。恥ずかしくて人に合わせる顔がない。
  • 大辞林: 恥ずかしくて顔向けができない。申し訳ない。
  • 明鏡国語辞典: 体面を失い相手に合わせる顔がない。恥ずかしい。
  • 精選版日本国語大辞典: 体面がなくなるほど恥ずかしいさま。謝りたい気持ちを伴うこともある。

いずれも「体面が保てず恥ずかしい」点が共通しており、場合によっては軽い謝罪のニュアンスを帯びることも示唆されています。

歴史的コラム:江戸中期の浮世草子『世間胸算用』には「面目なき次第で候」という表現が登場し、武士の家名に関わる失態を恥じ入る場面で用いられています。これにより、「面目ない」は古くから“社会的評価を損なった恥”を意味していたことがわかります。

「面目ない」の意味と解釈

語源の「面目(めんぼく/めんもく)」は「他人に示す立場・名誉・体面」を指し、これを否定形にしたのが「面目ない」です。「面目がない」と同義で、自責の感情恥じ入る気持ちを表現します。近年のビジネスマナー本では「謝罪の意が弱いため、取引先には『申し訳ございません』を併用すべき」と説明されることも多く、言葉選びの注意が促されています。

「面目ない」の読み方と使い方

  • 読み方:めんぼくない/めんもくない(ともに一般的だが、NHK『新用字用語辞典』では「めんぼくない」を推奨)
  • 使い方「今回は大変ご迷惑をおかけし、面目ない限りです。」
    「面目ないことでございますが、ご容赦ください。」

「面目ない限りです」「まことに面目ない」「面目ない思いでいっぱいです」など、副詞的に強調して用いることが多いです。同時に**「誠に申し訳ございません」**を添えれば、“謝罪+自責”の両面が明確になり、より丁寧な印象を与えられます。


「面目ない」と「申し訳ない」の違い

言葉の使い方の違い

謝意を示す際にどちらの語を選ぶかで、相手が受け取るニュアンスは大きく変わります。以下の表に、典型的な場面と感情の向き先をまとめました。

表現 主な場面 ニュアンス 感情のベクトル
面目ない 失態や約束違反で自分が恥ずかしいと感じるとき 自己の面子が立たない 内向き(自責)
申し訳ない 相手に迷惑・損害をかけたとき 明確な謝罪 外向き(相手への謝意)

ワンポイント: 口語では「ほんと面目ない」と軽く使われる一方、「申し訳ない」は改まった語感が強く、メールでもそのまま使用可能です。

ニュアンスの違い

「申し訳ない」は相手への謝罪が核心ですが、「面目ない」は自責の念が中心。ビジネスメールで謝罪するなら「申し訳ございません」が適切です。また、面目ないを単独で用いると謝罪が伝わりづらいため、「面目ないばかりでございますが、まずはお詫び申し上げます」のようにダブルフレーズにすることで誤解を避けられます。


「面目ない」の具体的な使い方

日常会話での例文

  1. 「約束の時間に遅れてしまって面目ないよ。」
  2. 「テストで赤点だなんて、面目ない。」
  3. 「君の誕生日を忘れてしまって、本当に面目ない……。」
  4. 「あんな態度を取ってしまって、あとから考えると面目ない気持ちでいっぱいだ。」

ちょっとした失敗や気まずさを笑いに変えたい場面でも「面目ない」は使えます。親しい間柄では、軽く「面目ないね〜」と冗談めかして使うことも。

ビジネスシーンでの例文

  1. 「提出期限を守れず、面目ない限りでございます。」
  2. 「私の確認不足でトラブルを招き、面目ない思いです。」
  3. 「お客様対応が後手に回り、面目ないご報告となってしまいました。」
  4. 「進捗が滞っており、現時点で成果を出せておらず、面目ないかぎりです。」

ただし正式な謝罪が必要な場合は「申し訳ございません」を併用しましょう。「面目ない」だけでは謝罪の意図が伝わりにくいため、「面目ない思いとともに深くお詫び申し上げます」といった表現が丁寧です。


「面目ない」の類語とその使い方

「かたじけない」との使い分け

「かたじけない」は感謝・恩義に対して恐縮する表現で、相手の好意や厚意に対して「ありがたくて身が縮まるような思い」を伝えるときに使います。古語的な響きを持ちつつ、時代劇や式典などの場面で目にすることもあります。一方、「面目ない」は自責で恥じ入る場面に使われ、自分の失敗や過ちに対して申し開きができないという心理を表します。

両者の違いは、相手に対する感情の方向性にあります。「かたじけない」は相手への感謝を表す外向きの表現、「面目ない」は自分自身の落ち度を反省する内向きの表現と言えるでしょう。

類語一覧

  • 恐縮だ:相手の厚意や状況に対して恐縮する丁寧語
  • お恥ずかしい:軽度な自己否定や照れを含む柔らかい表現
  • 情けない:失望や不甲斐なさを嘆く表現
  • 忸怩(じくじ)たる思い:強い自責と羞恥を内面で感じている状態
  • 後ろめたい:罪悪感や良心の呵責を抱えている気持ち
  • 面が割れる:体面や立場が保てなくなる様子(やや俗語的)

「面目ない」の表現を英語で

英語での言い換え

  • I am ashamed of myself.
  • I feel embarrassed.
  • I cannot show my face.
  • I am mortified by my actions.
  • I have disgraced myself.

これらの表現は、「面目ない」と同様に自己の失態に対する恥や後悔を示す言い回しです。「ashamed」や「mortified」は深い恥の感情を、「embarrassed」はより軽い気まずさを、「cannot show my face」は比喩的に顔向けできない心理を伝える定型句です。

海外の文化における類似表現

英語圏ではshame(恥)embarrassment(気まずさ)で感情を表しますが、日本語の「面目」ほど社会的体面の概念は強調されません。欧米では個人の感情や責任に焦点を当てる傾向があり、「社会に顔向けできない」というよりは、「自分自身への失望」や「倫理的な後悔」が主眼となる場合が多いです。

また、「I owe you an apology(謝る義務がある)」「It was my fault entirely(完全に私の責任です)」など、責任と誠意を明示する表現も謝罪の文脈で用いられます。


以上、面目ない意味を中心に、語源から実践的な使い方まで網羅しました。適切な場面で使い分け、相手に誤解なく気持ちを伝えましょう。

 

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